かながわ歴史教育を考える市民の会
 
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 No.51  2013年2月10日

 

=かながわ歴史教育を考える市民の会 第16回定期総会報告=

■第16回総会定期総会で新事務局長を選出
かながわ歴史教育を考える市民の会では、十五年戦争の発端となった柳条湖事件にちなみ、毎年9月18日前後に定期総会を開催しています。第16回定期総会は9月18日、かながわ県民センターに70人の参加を得て開催されました。
定期総会では、横浜・藤沢などの教科書採択問題、「日の丸・君が代」をめぐる判決、大阪府市の状況などの課題を共有するとともに、新事務局長に高梨晃嘉さんを選出しました。

 記念講演報告
「問われる歴史対話のあり方−日中韓3国共通教材づくりの現場から−」

■日中韓3国共通教材づくり
記念講演の講師は、日中韓3国共通教材づくりに関わった関東学院大学の齋藤一晴さんで、おもに次の4点について述べられた。
 @なぜ日中韓共通歴史教材が必要なのか。
 A日中韓共同編集・同時刊行『未来をひらく歴史』(高文研、2005)の刊行。
 B『未来をひらく歴史』作成の論点と成果・課題。
 C日中韓の若い世代がどのように『未来をひらく歴史』を学んだか。

 @の問いかけは、戦争の風化の問題は日本国内だけではない。中国、韓国でも今日戦争と向き合うことは簡単でないということなのだ。中国でさえ、盧溝橋事件が起こった西暦と日時を正確に答えられた人は56.5%であり、教科書に占める抗日戦争記述は1990年代と比べると1/3に減少、経済発展に比率が高まっている、との指摘があった。
 『未来をひらく歴史』作成の論点と成果と課題を整理する中で、@南京大虐殺の30万人という犠牲者数をめぐって、A日本軍の重慶爆撃とアメリカ軍による東京大空襲:同じ空襲の被害者の扱いをめぐって、という二点から各国の研究者同士が、歴史対話を通して認識が少しずつ変化し、相互理解を深めていく過程をうかがい、歴史対話のあり方を考えさせられた。
 @は対話によって変化が起こった事例だ。中国側が草案を書いた。研究者間では、犠牲者数は18?23万人位というのが共通認識になっていたが中国側は、30万人を主張。対話後、時系列にそった全体像の解明、30万人という数字は載せない、被害者個人に焦点を当てるなどの変化が起こった。中国の有数の学者達である彼等は、公式数30万人を載せなかったことで、国内からの批判を受けたが、研究者としての筋をとおした。Aは、@と違って10年たっても進展がない課題だ。日本側が草案を書いた。東京大空襲は原爆に匹敵する連合国による無差別大量殺人で国際法違反である。アジアの国ぐには日本の戦争被害を知らない、と。しかし、中国側は被害国の空襲被害者と加害国の空爆被害者を同列には論じられないという姿勢を変えなかった。日本政府は重慶と東京の両方とも無視している。重慶を国際法違反といったら、アメリカにも東京大空襲は国際法違反になると言わざるを得なくなるからだ。重慶爆撃を無視することは、自国民も無視することにつながる。ともに裁判が行われており、裁判の当事者達は交流しているし、両方とも尊厳を回復しなければいけない事件なのに、まだ、共通教材として書くことはできないでいる。歴史対話は、すべて解決はできないが続けなければならないのだということをも学び合う場なのだ。
 最後に日中韓の若い世代がどのように『未来をひらく歴史』を学んだのか、子ども達の感想文も資料を通して紹介してくれた。韓国の生徒が沖縄戦を学ぶことで変わっていく事例も紹介された。
 歴史観の違いをすりあわせるのは確かに難しい。ただ、何を共通教材として扱いお互いの国の現在の状況を踏まえながらどういう認識をもてるのか、可能なのかを対話する機会は決して無くしてはいけない。

(高等学校教員 五十嵐雅美)

かながわ歴史教育を考える会市民の会では、1月25日に『「学校における「日の丸」「君が代」の扱いと「思想・良心の自由」の確保についての申し入れ』を神奈川県教育委員会に行いました。
 2月27日(水)午前10時から1時間程度、話し合いを行います。参加していただける方は連絡をお願いします。
 申し入れ文書については、ホームページでご覧ください。







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